フェミサイドは、ある。

ZINE『フェミサイドは、ある』 皆本夏樹 タバブックス

2021年8月、小田急線内で刺傷事件が起こりました。

犯人は過去に「出会い系であった女性にデート中に断られた」などということを理由に、「幸せそうな女性を殺そうと思った」と供述したとニュースになりました。

先日、東大駒場キャンパスで「#弱者男性をエンパワメントする」という立て看板が出現したそうです。
そしてその看板には、「我々に婚姻の自由を」「生殖の権利を」とも書かれていました。

「弱者男性」とは、インターネット上でよく「女性に相手にされない男性」という文脈で使われることが多い言葉です。

それを踏まえて考えると、この「婚姻の自由」「生殖の権利」というのは、「結婚させろ」「セックスさせろ」という意味合いなのではないかと想定できます。

しかし本来これらの言葉は、異性愛者しか日本では法律婚ができない中で、同性愛者の人たちが婚姻制度を求める運動で使われる「婚姻の自由を」であったり、日本の女性にとって避妊・妊娠・出産・中絶は自分の身体のことにもかかわらず、非常に管理がしづらいことに対して求める運動で使われる「生殖の権利を」だったりするのだと思います。

それらの言葉を「弱者男性」が全く違う文脈で使ったと思われます。非常に侮辱的なことだと思います。

当たり前のことですが、婚姻もセックスも相手との同意があることは大前提です。それは男性に限らず、全ての属性の人がきちんと取らなければいけないものです。

嫌がっている相手と結婚したりセックスをする権利は、誰一人としてありません。

女性は男性にとって、当然与えられるご褒美とかトロフィーとかものではありません。

女性が「手に入らなかった」と言って、「自分を選ばなかった女性」に怒りがむくのは、その女性が1人の人間としての意思があることを知らないからなのではないでしょうか。
そしてそれを「女性差別」「女性蔑視」と呼部のではないでしょうか。

自分が結婚、セックスができないつらさを訴える時に、きちんと「それがつらい」と言わずにマイノリティの運動を茶化し言葉を奪うような行為をする人と、人間関係を作りたいと思う人が果たしてどれだけいるのでしょうか。

多くの人が、女性をモノ扱いする人とは結婚もセックスもしたくないと思います。

なぜモテないのか、なぜモテなくてつらいのか、なぜセックスできないのか、なぜセックスできなくてつらいのか。

そこに向き合ってしまったら結局、フェミニズム運動に参加する以外解決方法がないと直視することになってしまうからでしょうか。

「弱者男性」、女と結婚できなくてセックスできなくてつらい、悔しいと思っている人が闘うべきは、心身ともに健康な男性しか出世できないような社会のあり方、子どもを望んだ時に男性のお金に頼らざるを得ないような状況に女性を追い込み続けたこと、結婚や女とセックスをすることが「勝ち組」であるかのような価値観を作り上げた人たち、経済格差、教育格差、コミュニケーションが上手く取れなかったり「男らしい」とされない人たちをバカにするホモソーシャル文化、「男は泣き言を言うな」と言って男に弱音を話せない社会、男が一家を支えることが当然かのように組み立てられている家父長制の大きな名残、それをずっと維持してきた自民党や統一教会、つまりフェミニストが日々闘っているものそのものなのに!

本当に立ち向かわなければいけない強い立場の人たちにむかえず、立ち向かえないばかりか本来味方であるはずの人間をバカして、それであなたたちの「モテなくて、結婚できなくて、セックスできなくてつらい」がどう解決されると思ってるのか。この立て看板でどうエンパワメントされたというのか。

そして思う。モテなくて結婚できない女や性的マイノリティの存在は一体どこに行ってしまったのか。

更に女たちには「男に好かれるため」「モテるため」「選ばれるため」の教育をながーい年月かけて行ってきたのでは?

多分、「男はある程度妥協できるのに女は基本的に男を嫌がっている」とか思っている人が多いと思う。だとしたらそれはなぜか?

女が男ほど気軽にセックスできないのは、先述した通り「生殖の権利」が十分ではないからではないですか?
妊娠するかもしれない、妊娠したらアフターピルは高い、中絶は配偶者の許可がいる、中絶手術は世界と違って女性の身体に負担が多い、コンドームを付けないやつが本当に多い、かと言ってピルは高い。沢山あるはずの避妊方法がほぼ気軽に手が出るようなものではなく、男性に決定権がある。(そして最中にコンドームを外すなんていう性暴力も時に起こる。)そして勝手にAVを教科書にして独りよがりのセックスをする。これらが解決されればもっと気軽にセックスする女性、増えるんじゃないですか?

そして何より、なぜ男性の方が女性を好きになれるか、それは世の中に男性差別が女性差別よりも少ないからだと思います。

そりゃあ基本的に差別しない相手だったら、もっと安心して好きになれると思うよ。

どういうことかって、普段から
・勝手に性的に見ない(見てしまっても伝えない)
・「感情的だ」と決めつけて話を聞かない、ということをやめる
・自分の方が相手より知識があって論理的だと思い込まない
・相手は自分の要求を飲むべきだと勘違いしない
・相手は自分を楽しませるために存在していると思わない
・相手にとって仕事は大した価値がないから自分の都合で辞めさせてもいいと思わない
・結婚したら自分の名字に変えるのが当然だと思わない
・露出をしてる女は男に好かれたいと思ってるという思い込みをやめる
・女はモテる女に嫉妬していて、男に求められたいと思っているという勘違いをやめる
・結婚したら妻は夫の性的要求に答えるべきだという思い込みをやめる
・稼げない女は夫の言うことを聞くべきだという勘違いをやめる
・人から不快に思われないために化粧して着飾ることは当然のことだという思い込みをやめる

これ、ほとんどの女性は男性に対してしてないから。してても男性よりは圧倒的に少ないはず。

こういうことする相手を気軽に好きになれないということだと思います。

当たり前でしょ?こういうふうに、「自分を好きにならないこと」に対して怒って来る人を好きになるなんて、無理なんですよ。

小田急線内での刺傷事件も、「弱者男性論」も、同じ話だと思います。

東大駒場キャンパスの立て看板は、果たして本当に弱者男性をエンパワメントしてくれたのでしょうか。
それで結果、結婚やセックスに繋がってハッピー、になれるのでしょうか。

問題の所在を見誤ると、解決されないまま悪化していくのみです。どこかで気がつけるといいなと思いますし、気がついてフェミニストに連帯している男性はすでに沢山います。

そういう人たちと繋がってブラザーフッドできたらいいね。
私や女性は自分たちの権利のことでいっぱいいっぱいなので、男性も自分のことは自分でやろう。

そして、セックスも結婚も男と付き合うこともできない独り身の女性のこと、散々バカにしてきといてそれはないよなぁ。
時には自分で選んだ女性まで「できなかった」ということにしてバカにするのに。

そういうとこなんじゃないの、と思います。

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