「#KuToo:靴から考える本気のフェミニズム」という書籍を作った目的

裁判が終わってから、たくさんの方に「改めて本当に良い本ですよね」と言っていただくことが多くてとても嬉しい、私が初めて出版した書籍、「#KuToo:靴から考える本気のフェミニズム」。

今日は改めて、著作権言いがかりへんてこりん裁判があったので最近あまりお話ししてこなかった、この本の内容についてきちんと書いておきたいと思います。

一部の弁護士やこのブログや#KuToo本を読んでくださっている方にはお馴染みであろうのお母さん(注!私の母じゃないですよ)、原告たちはどうも、「石川優実は男を攻撃するため、バカにするため、陥れるためにツイートを引用したんだ」と思い込んでいるようです。

まず、なぜこの本を作ったか、なぜツイートをわざわざ引用したかの目的は当然「私、石川優実」の目的であって、「他人が勝手に想定した石川の目的」は「他人が勝手に想定した石川の目的」でしかないことをご理解ください。
私以外の人がそれを決めつけられると思っている時点で、私は見下されているんだと感じています。私の意思よりも、私が表明している私の意思を嘘とし、他人が想定する目的の方を事実だと思い込んでしまうのですから。そこに私の意思が存在しません。私が作った本なのに、です。

私が思っていることを他者が勝手に決めつける。それ自体、女性がずっとされてきた差別です。性被害に遭えば「誘っていたんだろう」、「相手を陥れるために嘘をついているのだろう」、「目立ちたいのだろう」、女性同士が批判し合うと自分にとって都合の悪い方を「嫉妬しているんだろう」などなど。自分の心にないことを勝手に捏造されそれが事実かのように責められる。そんな経験をしてきた女性は少なくないと思います。

私の思い、気持ち、感想、目的、意図は私が自分で話します。話しています。私に反発する人と違い私はきちんと、「私」を主語にしてお話ししています。私の気持ちは、私の感情は私のものです。他の誰にも渡しません。

「#KuToo:靴から考える本気のフェミニズム」はこんな本

この本は、裁判にもなったツイートを引用した第二章、「#KuTooバックラッシュ実録140字の闘い」が注目されていますが、それは本書の一部であり、実際にはこんな構成になっています。

【目次】
私の感情は私が決める

1 #MeToo → #KuToo

#MeToo「私も。」
#MeToo というハッシュタグを知っていますか
#MeTooだった過去と現在
 グラビア時代の露出問題
 逃げられなかった接待強要
 枕営業詐欺
#MeToo と言いたいのは
 あなたのからだはあなたのもの
 苦しんでいる女性へ
 相談された男性へ

フェミニストであることをめんどくさがられたって
 私って、めんどくさい女
 私を救った本の話
 私はもう絶対に黙らない

仕事でパンプスやヒールを強制されてしまう話 #KuToo
 パンプスやヒールが指定されることの問題点
 論点がズレているたくさんの意見

#KuTooに関わってくださったみなさんへ、感謝の気持ちを込めて

2 #KuTooバックラッシュ実録 140字の闘い

3 石川優実、#KuTooで女性の未来を変えるため、労働について本気で考えた
対談1 内藤忍さん(独立行政法人 労働政策研究・研修機構 副主任研究員)
対談2 小林敦子さん(ジェンダー・ハラスメント研究、コンサルタント)

資料1 厚生労働省宛 職場における女性に対するヒール・パンプスの着用指示に関する要望書
資料2 Change.org #KuToo 署名キャンペーン賛同者コメント集

あとがき

#KuTooを始めてから起こったことをしっかりと共有したかった

2019年の2月に、#KuTooの署名運動を始めました。メディアに多数取り上げられると同時に、本当にたくさんの、とても批判とは呼べない誹謗中傷や的外れなアドバイスなど、大量に私の元に寄せられました。または、ハッシュタグや私の名前を使って書き込まれました。

#KuTooに誹謗中傷が始まったと感じた時のことを、私ははっきりと覚えています。
「これは女性差別の問題です。だから、みんなでスニーカーにしようという運動にはしない。フェミニズムの運動です。まず今女性にだけヒールを義務付けていることへ抗議する必要がある、きちんとここに女性差別があるということを可視化させる必要がある。」
こういうことを私が明言した時に、ガラッと空気が変わりました。寄せられるコメントの種類が変わりました。

健康や労働の問題なら賛同「してあげてもいいけど」、女性差別というなら賛同しない、女性差別ではない、そこから私への攻撃が始まりました。グラビアで許可していないものが発売された過去を告白していましたが、私へのリプで当時の写真を貼り付けてくる人、私の仕事先を突き止めようとする人、こんなルールは存在しないから私のことを嘘つきだと言いふらす人、違う仕事をすればいいと気軽に今の仕事を手放せと「アドバイス」する人・・・

本当にたくさんのご批判がやってきました。DMでわざわざ送ってくる方もいましたね。

これらは2019年の6月に署名を提出し、一回めに#KuTooが国会で取り上げられた直後にとにかく量が増えました。この時は根本元厚労大臣が

「(ヒールやパンプスを)義務づけられることについてどう思うか?というお話ですよね。女性にハイヒール・パンプスの着用を指示する、義務づける。これは、社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲かと。ま、この辺なんだろうと思います。それぞれの業務の特性がありますから。」

と答弁したことを、様々なニュースが否定的に捉えて報道した点が大きかったと思います。
この時私の元には、たくさんの、特に「アイコンに日本国旗がついている人」「Twitterのプロフィール画面のヘッダーが富士山や桜の人」たちから凄まじい攻撃を受けました。「日本を愛している人たち」でしょう。(これ以来私は富士山がトラウマ・・・)

今はもうこういったものに慣れてしまったのもありますし、#KuTooというハッシュタグや自分の名前で検索することは怖くてもう2年以上できていないので目にしていない、というのもありますが、当時は精神的にものすごく負担があって、この時体重は普段よりも3キロくらい落ちて、夜中に痙攣を起こして無意識に叫んだり、すごくしんどい時間を過ごしていました。

しかし私は、これらを見て見ぬふりをしてはいけないと強く感じました。なぜなら、フェミニズムを知る前の自分が思っていることとほぼ一致していたからです。世の中に溢れるこのような言説を私は真に受けて、女は痛くてもヒールを履いて仕事をしなければいけないと思っていたし、履けないならその仕事は諦めなければいけない。だから私は実際、二十歳の頃にホテルの専門学校に通っていて、授業の一つである泊まり込み研修で初めてヒールを履いて8時間立ちっぱなしの労働をしたとき、自分には無理だと思ってその道に進むことを諦めたのです。ヒールの履けない自分は、この仕事に向いていないんだと本気で思っていたからです。私の元に寄せられる多くの批判は、かつての私が信じていたものそのものでした。

そして、とにかく「この女は嘘をついている」という印象操作をされました。そして、「こんな嘘をついている女のしている運動は信頼してはいけない」という空気が形成されていきました。

これらのものをこのまま何の否定もなしにネットの空間に放置しておくことは非常に危険なのではないかと思いました。これらを見た素直な女の子たちは、信じてしまうんじゃないか。これが「多数派の意見だ」と感じてしまったら、その価値観が内面化されてしまうのではないか。そう思い、また、デマや嘘をついたという印象操作も、「きちんと目にしたものは否定していく」ということを心がけました。

これが、既に起こってしまったデマや的外れなアドバイスに対してできる最良のことだと思ったからです。

きちんとこれらを紙に残そう、という提案

これを見ていた現代書館の山田亜紀子さんも、同じように思ってくださった方の一人でした。
ちょうど別の仕事でご一緒していた時がバッシングがひどい時だったので、これらの出来事を含めて、#KuTooという運動をきちんと紙に残そう、そう提案してくださいました。

バッシングや誹謗中傷に対して「放っておけばいい」「相手にするから余計酷くなるんだ」と、応援する側の人がいうことが本当に多いです。しかし、これらのことはむしろきちんと批判しておかないと、外から見た何も知らない人たちはデマや悪い印象操作されたものをそのまま信じてしまいます。そうやって世の中の空気が作り上げられていきます。バッシングする側からしたら、私に黙っていてほしいに決まっているじゃないですか。その方が容易に印象操作をしたり嘘を世の中に広めやすいのですから。

だからそれをきちんと阻止すること、いちいち抗議すること、いちいち否定すること。それが本当に大切なことで、それをアドバイスのつもりで止めることは、相手の印象操作に加担しているということを認識していただきたいです。

そして、山田さんは実際にツイートを引用して一個一個批判していくことを提案してくださいました。もちろん、山田さんはプロの編集さんです。著作権の講習だってきちんと受けていますし、この時もしっかりと「こういう要件を満たせば引用ができます」と細かく説明してくださいました。

よく、「なぜわざわざツイートを引用したのか」と聞かれますが、ここできちんと現物を載せないと、嘘をついていることにされることが分かりきっていたからです。

「そんな誹謗中傷はどこで起こっていたんですか」と、私が存在しない誹謗中傷を作り出していることにされるでしょう。なのできちんと本物を出して見せたわけです。

また、Twitterはどんどん先に流れていってしまいます。きちんとこういうツイートがなされた事実を、本当して紙に残しておかなければ、#KuTooというフェミニズム運動に対してどんなバックラッシュが起こったのか、がないことにされてしまう。それは絶対避けたかった。

そして私が体験したこの現象を、これから運動をする人に共有したかった。マイノリティが権利を主張するといつも起こるこのバックラッシュは、本当に判を押したかのようにパターン化されています。それを知ってもらって、何かびっくりするようなことを言われても「あ、これはあのパターンか」と客観的に分析できるような状態を作ってもらいたい。そうすることによって、バックラッシュに耐え得る力を持ってもらいたいし、バックラッシュ自体をもっと大きな視点から考えてもらいたい。

私が様々な人のツイートを引用した目的はこれです。

先日のひろゆき氏の辺野古座り込み言いがかり事件でも明らかになりましたが、本当に同じ手法が繰り返されています。

実行する本人たちがそれに気がついているのかどうかは分かりませんが、パターン化されています。やられる側はこれらをしっかり認識していれば、対策が考えらるのではないでしょうか。

身近な靴というものから、フェミニズムについて本気で考えて欲しかった

#KuTooができた時、多くの人からフェミニズムや女性差別と#KuTooを切り離そうとする動きが見られました。フェミニズムを学んできた私が気がついたものなのに、「みんな楽な靴で働きたいよね」という動きに回収されそうになりました。長年女性にだけヒールを履かせてきたという女性差別は、ないことにされそうになりました。

絶対になかったことにはさせない、私の希望は「楽をしたい」ではなく、「性別に関係なく全ての人が同じ土俵でチャレンジできること」です。上辺だけ取り繕って、これまで女性の足を踏んできたことを全く無視して表面だけ穏やかに「みんなでよくしていきましょう」では、根本的な解決にならない。私は靴の問題だけじゃない、この社会から全ての女性差別をなくすため、この運動を立ち上げました。この運動をきっかけに、日本にある様々な女性差別に気がついて欲しかった。そして、女性が男性と同じ権利を得ようとするとどんな反発が起こるのか、どんな目に遭うのか、そこまで含めて知って欲しかった。

それが私が#KuToo運動に取り組む中でずっと願ってきたことであり、この本に込めた思いです。私自身、靴のことを通してフェミニズムのことを本気で考えつづけたこの3年間でした。

判決が出て、この本は著作権侵害していません、という結果になりました。
もし「他のものが引用要件を満たしていないかもしれないじゃないか」と思う方がいたら、それは全ての書籍がそうだということを認識してください。世の中にある多くの本が人の言葉を引用し、裁判にかけられていないので、それが著作権を侵害しているのかいないのかの判断がなされていないのです。

改めて、たくさんの方に読んでいただきた本です。心を込めて作った本です。どうぞお手に取っていただき、読んだ上で率直な感想を聞くことができたら嬉しいです。

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