#誹謗中傷にできることは

何年か前に、こんな記事を書いていました。

まだ#MeTooもする前だし、フェミニズムなんて言葉も知らない時でした。なので、スタンスとしてだいぶ違うところもありますがこの頃から匿名で他人を傷付けようと誹謗中傷する奴、例外なくクソだと思っていたようです私。

グラビアを始めたのが15年ほど前です。インターネットというものに多くの人が触れるようになった時代です。

ブログを始め、2ちゃんねるというものを知り、amazonのレビューに感想を書かれました。

2ちゃんねるに、卒業アルバムの写真を載せられました。
Amazonのレビューには、セクハラがたくさん書き込まれました。

当時から悩みでした。
なんで見知らぬ人に体について好き放題、そして「早く脱げ」「もったいぶるな」「お前に価値なんかないんだから演技なんてできるわけない、だから脱ぐしかない」など書かれなきゃいけないんだろう。

今よりももっと「有名税」「気にするな」「みんなそうだ」「気にする方が悪い」という風潮が強かったと思います。大人や社会に出ていう人の言うことは正しいと思い、素直に信じる人間でした。傷つきながら、我慢してきました。

だけど、「これを言ったら相手が嫌な思いをすることはわかっているであろうことをわざわざ表明する人」に対しての理解はどうしてもできませんでした。人に嫌な思いをさせたい人の気持ちは、わかりませんでした。

女性差別を指摘すると黙れせにくる人々

「#KuTooの活動は女性差別の問題だ」という指摘をし始めてから、誹謗中傷の種類が変わりました。

それまではセクハラや容姿に対する誹謗中傷だったものに加えて、デマを流されたり少し勘違いや言葉が足りないようなことがあると意図的にやっているということにされるようになりました。

私は詐欺や嘘をついたことはありませんが、「石川優実」と検索するとそのあとに「詐欺師」、「嘘つき」と表示されるようになりました。
そういったツイートが何千いいねがついたりRTがされた次の日は、電車に乗れなくなりました。

会う人すべての人が、私のことを詐欺師と思っているんじゃないか、と感じるようになりました。

プライベートの場で名前を名乗るのが怖くなりました。

バイト先で、誰も何も言わないけど本当は私のことを嘘つきの詐欺師だと思っているんじゃないか、という気持ちから離れられませんでした。

死なないとこれは終わらないんじゃないかと思いました。気が遠くなりました。

私への誹謗中傷がひどくなったのは#KuTooを「女性差別の問題だ」と指摘した時からです。
これでは、女性差別を訴えた人がこれからも潰されてしまう。
こんな環境で、女性差別の運動が発展していくわけがない。

そう思い、この誹謗中傷も運動の一部だと考え、本に引用し残しました。

2019.11 「#KuToo--靴から考える本気のフェミニズム」現代書館

誰かが死ぬ前になんとかしてほしかった

木村花さんが亡くなりました。
以前noteにも書きましたが

なぜ人が死ぬまで何もしないんですか|石川優実|note

木村花さんという方が亡くなりました。 私は自分が死んだ気分です。他人事とは思えません。 私がなぜたまに死にたいと思ってしまうかの理由に、「死ななければ終わらないから」「死ななければわからない人たちが嫌がらせを続けるから」ということがあります。 死にたいというよりも、死なないといけないのかなと考えます。 ...

本当に問題認識するのが遅いと思います。この件に限らずです。

二年ほど前から誹謗中傷と正面切って戦ってきましたが、普段セクハラや性暴力に関して
「加害者の問題だ」「受け流せというな」
などいう人もなぜかネットの誹謗中傷に対抗すると

「そんなの見なければいい」となってしまう。おかしいだろうと思っていました。

見なくたってそこにあるのに。
デマならなおさら、私が見なくて済む問題ではないはずです。


本当は放置してはいけない問題だったはずです。

#訴訟を始めます

伊藤詩織さんがはすみとしこ氏を提訴しました。
昨年の秋に詩織さんと対談イベントをしました。
その時にも、ネットの誹謗中傷に関しての話が出ました。

ポジリプいいね、性差別との闘い方 石川優実×伊藤詩織:朝日新聞デジタル

職場でのパンプスなどの強要に反対する#KuTooを進めてきたグラビア女優の石川優実さんと、レイプ被害を告発し日本における#MeTooの先駆けとなったジャーナリストの伊藤詩織さんが、「共感のその先へ」をテーマに対談しました。朝日新聞大阪本社で開いたイベントの一環。声を上げて見えた社会、メディアそしてSNSの課題とは? ときに励ましあいながら、性差別との闘い方を考えました。  ――お互いの印象は。

詩織さんも私も、やはりなんとかしなければという気持ちだったと思います。
その後、オンラインハラスメントに関して何かできないか、という点で詩織さんと話すことが増えました。
この頃から、少しずつ自分以外にもいろんなところで問題視してくれる人たちがちょこちょこ出てきた印象でした。(元々問題視はしていたのでしょうが、行動に移さなければという人たちが増えた印象です。)

応援してくださっている方へ

たくさんの誹謗中傷を受けて気がついたのですが、賛同してくださっている人は結構その人が誹謗中傷を受けていることに気がつきにくいこともあるかと思います。

例えばtwitterですと、リプライはTLには流れてきません。「見に行こう」としないと目に入らないことが多いように思えます。
そのほか、例えば私の名前で検索をわざわざしなければデマ情報などは出てこないかもしれません。

木村花さんがひどい誹謗中傷を受けていることを、どれだけの方が把握していたのでしょうか。
この件があって取材を受けることがありますが、誹謗中傷の例を送ると
「石川さんがこんなひどい言葉を受けていることを知りませんでした。リプは数がついているのは知っていますが、応援コメントがついているものとばかり思っていました」と言われました。

だからこそ、誹謗中傷を受けている人は孤立しやすいのだと思います。

誹謗中傷をする人の特徴として、その人を孤立させるような言葉を使いたがる傾向があると感じています。

・あなただから嫌われるんですよ
・フェミニストに迷惑かかっています
・だから女性に嫌われるんですよ
・信頼されないのはお前のせいだ

などです。どれも、とても主語が曖昧です。
自分の感想を「世間の感想」にしがちです。

だけれど、冷静に考えればそうでない人だっているはずです。
私だから私のことを好きな人もいるし、フェミニストで声をかけてくれる人は私の元にはたくさん来るし、私のことを好きといってくれる女性もいるし、私だから信頼できるといってくれる人もいる。

しかし応援してくれる人はしっかりと「自分の意見」を伝えてくれるので、無駄に主語を大きくしないんです。
そうなると、人の意見を素直に聞く人は自分は多くの人に嫌われてるんじゃないかと思ってしまいます。

そもそも嫌われてても何も問題もないはずなんですけどね。まるでそれが悪いことかのように思えてしまいます。

だからこそ、twitterでトレンドに入ったような「#わたしは伊藤詩織氏を支持します」のような表明は本当に救われると私は思います。

無理はできないと思います。こんなひどい誹謗中傷がある中で声を上げろとは言えない。

だけど素直な気持ちをいうと、見て見ぬ振りをしないでほしい。一緒に怒ってほしい。初めて通報してくれた時本当に嬉しかった。誹謗中傷に言い返す声が大きくなれば、誹謗中傷されても救われる。元気になれる。

せめて、間違っても被害に遭っている人に「受け流せ」とか「見る方が悪い」とか言わないでほしい。

それは誰もが安心して安全な環境でSNSを利用できる権利を奪っているということに気がついてほしいです。

受け流してきたがこの15年間、なくなりませんでした。

法改正はどう考えようか

情報開示はもっと簡単になされるようになってほしいです。
情報が消えるのが早すぎます。
以前一度「石川優実のやり方は詐欺師の手口。」というツイートの仮処分は通りましたが、時間が経っていて特定に至りませんでした。

ただでさえ弁護士さんを選んだり打ち合わせしたりの時間調整したりで時間がかかるのに、3ヶ月で消えてしまったらお金も無駄になってしまいます。

言論をどうこうの前にまず、情報開示だけハードルを下げればいいのではないでしょうか。そこから先は裁判所が判断すればいい。

今は裁判に挑戦すらできない状態です。情報開示がされてきちんとやりとりすればそれが事実に基づいた批判なのかデマや脅迫・侮辱などの誹謗中傷なのかはある程度判断できるのではないでしょうか。

有名税とか法律にないし、影響力持っても発言する自由があるし

勝手に税を作らないでください。どんな仕事をしていても、私たちが払うべき税金は国に定められています。
芸能の仕事を差別しないでください。
芸能人を自分と同じ、生活をしている人間だという認識がありますか?

きゃりーぱみゅぱみゅさんへ、「何も知らないのに政治の話をするな」的なリプがたくさん飛びました。

なぜ何も知らない前提で話しかけるんですか?
彼女が普段から考えていた可能性は?

芸能人って、メディアに出てない時間があるのご存知ですか?
その大前提が抜けていませんか。

一人一人生活があって思想があって、私たちの知らない時間や思想があるわけです。

それがわかっていればそんな言葉、出てこないと思うんです。

私が誹謗中傷と戦っている時、
「そんなの相手にしてないでもっと本とか読んで勉強するべきだ」とかいう言葉をもらいましたが、なぜ私が本を読んでいないかのように決め付けて話しかけてくるのか不思議でした。

twitterもしていましたが、私はtwitterしながら本も書いたし本も読んだしいろんな集会にも顔を出したしいろんなフェミニストの先輩方にもお話を聞きにいったし。

まるで私がネット上でしか活動してないかのように批判してくることに違和感を感じました。

「影響力があるんだから発言は慎むべきだ」とかいう人もいますが、影響力を持ったら言論の自由がなくなるなんてのも法律にありません。誰にでも発言の自由があるはずです。

発言する側も権利を奪うのではなく、それを聞いたらしっかりと自分で調べ、自分の頭で考えることを徹底するべきなのではないでしょうか。

結局こういう、「芸能人も生活や背景があって自分と同じ一人の人間だ」という認識の欠如があって、芸能人への誹謗中傷もなくならないし受けながせと言えてしまうんじゃないかと思います。

最後に

誹謗中傷がやめられない人、私のツイートを見張ってる人へ。

私のように自分自身に一番に時間を使ってあげてください。
私に使う時間を、ご自身に使ってください。

一緒に言い返してくださってるみなさま、声をかけてくださる皆様。

本当にありがとうございます。大げさじゃなく、おかげで生きていられています。今はあまり返信を見れないようにしていて、皆さんの応援の声も受け取れなくなっています。

いつか、安心してSNSが開ける時がきたら嬉しいなと思っています。

今回、詩織さんのハッシュタグと一緒に自分に対するものも見かけました。本当に嬉しかったです、救われました。

勇気を出して呟いてくださって、本当にありがとうございました。

「あなたの味方だ」「私も怒っています」という意思表明、本当に最高に最強に強くなれます。

ありがとう!

#誹謗中傷にできることは” に対して2件のコメントがあります。

  1. Msuzu より:

    あなたの冷静な意見を読むと、こんなひどい目に合いながらどうしてこんなにきちんと向き合えるのかと思います。みないフリをしても解決しないのですよね。でもすごい。辛くないわけない。他人の私が見ても辛いのだから。
    Twitterの通報などでしか応援できないけど、これからも応援します。

  2. 矢吹 真理子 より:

    どういうお仕事をされている方かは知りませんでしたが、時々Twitter上でお名前を見かけていました。今回こちらの文章を読み、辛い思いをしている一人と知りました。わかりやすく立派な文章でした。誹謗中傷を受けた事のない人には想像のつかない苦しさがあると思われます。
    誰も攻撃していない人が苦しみ、攻撃する人が野放しという異常な世界。石川さんの言うように、情報開示がより早くなされる制度になるといいと思いました。
    何も力にはなれませんが、石川さんに共感します。

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